介護施設における看護業務~胃ろうの管理~

シニア・医療や介護

胃ろう(胃瘻)は、口から食事が摂れない状態の方の栄養管理の方法の中で、比較的安全な方法といえます。

しかし、胃ろうの管理に際して注意すべきことや看護師と介護士の連携が必要なことも多々ありますので、決して気楽に見ていいものではありません。

今回は、そのような胃ろうの管理の様々なポイントについて紹介します。

■胃ろうが必要な人の状態とは?

胃ろうが必要な人の状態とは、簡単に言うと経口摂取が困難な人です。

経口摂取が困難な人とは、脳梗塞や神経系の病気で嚥下機能が低下している人、誤飲性肺炎を繰り返す人、老化や認知症で食事を摂ることが困難・または拒否の強い人などが挙げられます。

看護師は、利用者個人個人の、現在の胃ろう管理が適正かどうか、常に意識して見る必要があります。

例えば、寝たきりで経口摂取が見込めず、胃ろうで栄養を摂っている人の場合は、それほど多くのカロリーを必要としません。

そのため、必要以上の栄養注入で肥満状態となり、介護が困難になってしまうケースもあるので、そのような人の注入量の調整なども、医師に報告・相談する必要があります。

また、認知症で胃ろう管理になっている人は、胃ろうの維持自体が困難なこともあります。

胃ろうを守ると共に、その他の栄養摂取の手段が無いかを探り続けるのも大切です。

■介護施設内で胃ろう管理を行う注意点

胃ろうには、ボタン式やチューブ式などがありますが、いずれにしても胃に開けた穴から直接栄養剤を注入しています。

胃ろうは、経鼻からの栄養注入よりも安全性が高く、医療機関以外でも管理が可能とされています。

そこで、介護施設内で胃ろうの管理を行う際の注意点を、いくつか紹介いたします。

○衛生管理

病院とは違い、胃ろうの物品や栄養剤を保管しておく適切な場所が施設内に無い場合もあります。

点滴類の様な清潔操作は必要ないですが、高カロリーの栄養剤なので、ある程度は綺麗にしておかないとすぐに雑菌が付いてしまいます。

胃ろう管理用の物品は、使用ごとによく洗浄し、しっかりと乾燥させてホコリや雑菌が付かないように管理しておく必要があります。

認知症の方が居る施設などでは、その方々が触らないような工夫も必要です。

○栄養剤注入時の注意

通常の食事でも必ず体を起こすことは基本です。

摂った食事の逆流や、それによる誤飲は生命の危険もありますので、良好な姿勢を保持する必要があります。

特に、胃ろうから栄養剤を注入する場合は、極端な表現ですが、スピードはゆっくりでも液体を一気飲みするのと同じような状態になります。

そのため、30~45度以上、しっかりと体を起こして注入します。

ただ、腰痛があるなどして、姿勢の保持が難しい方もいますので、そのような方に苦痛を与えないよう、ケースバイケースで工夫を行う必要もあります。

○口腔ケア

基本的に経口摂取をしないので、口腔内の自浄作用が働きません。

このような方のほうが、口腔ケアは特に入念にサポートしなくてはいけません。

経口摂取しないということだけでも、体の免疫力は落ちています。

口腔内からの雑菌で肺炎を起こしたり、気管支炎を起こして施設利用者の命の危機に関わってしまうということもありえます。

○胃ろう周囲の観察

胃ろうは”異物”ですので、拒否反応が起こる場合もあります。

最も多いのは皮膚トラブルで、発赤や腫脹、ひどい場合は膿が出てしまうことがあります。

看護師は、胃ろうチューブと皮膚の摩擦をできるだけ避けるように、こよりで直接当たらないようにしたり、必要時には医師の指示を仰いで軟膏処置などをしていきます。

○自己抜去への対応

胃ろうを自己抜去してしまった場合、穴がふさがってしまうことを防ぐことと、内容物の流出を防ぐことが、最優先されます。

日ごろから、万が一自己抜去してしまった場合のために、ひとまず胃ろう部に入れておける比較的清潔なチューブを用意しておくこと、すぐに受診できる医療機関が分かるようにしておくことが必要です。

■まとめ ~介護士との連携の必要性~

介護施設での胃ろう管理は、介護士との連携が欠かせません。

現在、介護士も胃ろうからの栄養剤の注入は認められていますし、基本的な手技や注意点は学んできています。

しかし、解剖生理に基づいた胃ろう管理に関しては、看護師が総合的に看なくてはなりません。

介護士が対応出来ないようなトラブルは、報告をもらってから看護師がトラブルに対処します。

日ごろから介護士と連携を取り、「こんな状態の時にはすぐに報告してほしい」というような内容を、出来るだけ明確にして施設内で共有しておきましょう。

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