ストーマを持っている人は、一度大腸がんなどを患って大手術を乗り越えた人です。
ストーマはボディイメージを大きく変えるため、葛藤や苦悩もあったことでしょう。
また、がんの再発の危険も常に抱えています。
単純にストーマのケアをするだけでなく、そのような経緯も気にかけてあげることで、その利用者に合ったケア方法が見いだせるのではないでしょうか。
ストーマとは、大腸の中でも特に”直腸”と呼ばれる部位にできたがんなどの根治術の結果、必要に応じて施される人工肛門・人口膀胱の総称です。
通常、肛門には括約筋があり、排泄しても良いタイミング以外では開かないようになっています。
その肛門括約筋のおかげで、多少の便意はあっても、トイレに座らない限り、便は出ないようになっています。
しかし、直腸がんを直腸と共に切除する場合、肛門括約筋も切除することになります。
人口肛門は、おおよそ左下腹あたりに梅干し大の腸を露出させ、そこから排せつを行いますが、先述したように肛門括約筋が無いので、常に便が出る状態といえます。
現在のストーマ製剤は、臭いや漏れ防止に重点が置かれた、様々な種類のものが出ていますし、ストーマを持っている方が少しでも快適に過ごせるような工夫が、随時研究されています。
それでも、常に便失禁してしまう状態なので、介護施設では、適切なストーマケアを行わないと、利用者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ、社会的に見た生活の質)が下がることになりかねません。
ストーマケアで大切なのは、皮膚トラブルの回避とプライバシーの保護です。
・ストーマの色や出血の有無の確認と周囲皮膚の確認
ストーマ自体にトラブルがあると、出血したり色が変色したりします。
綺麗な赤色でみずみずしいことが良いストーマの状態です。
その周囲の皮膚が便でかぶれたりしていないか、ストーマ製剤でかぶれていないか等、よく確認しなくてはいけません。
ストーマに何らかのトラブルが見つかれば、医師に報告して軟膏処置をしたり、適したストーマ製剤に変更するなど試行錯誤していきます。
また、ストーマ製剤の当たる位置を、切り方によって工夫してみることも良いでしょう。
・便の性状の確認
ストーマを作ることによって腸が短くなるので、うまく便をつくることができず、どうしても下痢をしやすくなります。
下痢をしていれば皮膚もかぶれやすくなりますし、利用者自身も脱水になりやすくなったり、腹痛を起こしたりします。
ストーマから下痢便がみられたら止痢剤の処方を医師に依頼したり、水分補給などをしていきましょう。
・プライバシーの保護
おむつ交換などと同様に、できるだけプライバシーに配慮した交換を心がけます。
また、ストーマ内容の破棄時だけでなく、入浴時なども他の利用者に見られたくない場合もあります。
利用者自身がストーマをどのように捉えているかも大切です。
言葉遣いなども重々注意しましょう。
ストーマケアは基本的に看護師の仕事です。
介護士は人工肛門の肌に密着したパウチの交換などはできません。
ただし、医療機関から適切な指導を受けて、ストーマケアの方法を理解したうえで、介護士が介助することは可能です。
つまり、看護師がパウチ交換や排せつ物を除去している間に、利用者の体位を保持するなどの介助は、介護士が行うことができますが、ストーマケアそのものは看護師が行う、ということです。
しかし、入浴などは看護師の管理のもと介護士が行うことができます。
看護師は介護士に、入浴時の注意点を伝え、その際に皮膚トラブルなどが観察されれば報告をもらいましょう。
また、ストーマのトラブルの一つである、便の漏れに対する対策については、施設内の移動や体位が原因である可能性もあるので、看護師と介護士が一緒に考えていくことを勧めます。
ストーマはかなり大きく人のボディイメージを変えるものです。
利用者は、一度は傷つきショックを受け、乗り越えたり乗り越えきれなかったりするときを過ごしています。
常に便失禁している状態なので、臭いなどについて取り沙汰されることも多いですが、利用者をこれ以上傷つけることのないよう、ストーマについて正しい知識を、介護士やヘルパーたちに伝えるのも看護師の仕事といえます。
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