被介護者にとって喜ばれる介護とは「安全」「安心」「安楽」この三つがすべての基本になります。介護士がきちんとした技術でもって介助にあたることで、被介護者が身体的にも精神的にも「安全」、苦痛なく「安楽」であることで、この人に任せておけば大丈夫だという「安心」も得られることでしょう。また、身体介助に関して言えば、被介護者にとっての安全な介助は、介護者にとっての身体的負担も少ないものです。
どの職場を選んでも言えることは、相手は介護をされる可哀相な人ではないということです。先の時代を生きてきた先輩方であるという尊敬の念を忘れずケアを行うようにすれば、必然的に信頼関係も生まれてくることでしょう。
被介護者自身やその家族の事情により自宅での生活が困難な方が新たな生活の場として入居されます。24時間交代制で介護士が常駐し、被介護者の介助にあたります。起床してから就寝、時には就寝後のケアも行うことになりますので被介護者の生活により密着した介護が必要とされます。
出来ないことの全てを手助けする。これは時間短縮になり合理的に見えます。その場では喜ばれるかもしれませんが、長期的な目線で見た時、本当にその被介護者の為になるかという自身への問いかけを忘れないようにしてほしいと思います。
例えば、時間をかければ衣服のボタンをとめることができる方に対して、介護者が手助けをすればその場は素早く更衣を行う事が出来るでしょう。 しかし、さりげなく待つ、ほかの業務を行いつつ見守る等ができれば、被介護者の「出来る喜び」と自尊心を損なうことなく同時に生活リハビリを行え、より質の高いケアを行うことが可能です。
しかし、人員の関係もあり、およそどの施設でもすべての被介護者にそうできないのが現状でしょう。また、被介護者各個人にとっての出来る喜びは必ずしも同じではないということを念頭に入れ、押し付けるのではなく、この人にとっての喜びとは何かを日々の会話の中から見つけられるようになりたいものです。
被介護者の自宅にお伺いし、決められた時間、事前に定められたケアプランに沿ってケアを行います。無愛想で覇気のない人が訪ねてくると被介護者も不安な気持ちになります。気持ちの良い挨拶と笑顔を忘れないようにしましょう。慣れてくると忘れがちになりますが、毎回事業所名と自身のお名前を名乗ることを心掛けてください。相手の名前を思い出せない、この人は何て名前だっただろうという小さな不安を取り除ける有効な手段です。
前回訪問時から体調に変化はないか、会話の鮮明さに変化はないか、身体に新しい怪我は見当たらないか、訪問時の挨拶でそういったことにも気を配れるようになると被介護者も「気遣ってくれる人」として介護者を認識してくれるようになるでしょう。
訪問してお掃除をして終わり、ではお手伝いさんと変わりありません。介護のプロとして訪問する以上、被介護者の「安全」を守れるように心掛けたいものです。また、平常と違う変化があった場合は、介護者自身の中だけで終わらせず、必ず事業所等と連携を取り報告するようにしましょう。
認知症を患っている方は、「過去」「現在」「未来」をつなぐ線が途切れ、バラバラにその記憶が存在しているようになってるのが一般的です。現在を記憶する力は弱くても過去は覚えていることが多く、プライドを傷つけるような対応は好ましくありません。認知症だから傾聴できない、何もわからないだろうと考えず、また先の時代を生きてきた先輩であるという尊敬の念を持ち会話を心掛けてみてください。
上から目線の物言いや子供に対する口調などは相手への礼を欠きますし、その失礼な態度は必ず相手に伝わります。必ず敬語敬称を忘れないようにしてください。敬語は相手を一人の人間として尊敬し会話するという基本的な礼儀でもあります。
被介護者から好まれる介護士とは、相手の体調や感情の機微にアンテナを張り、臨機応変に対応できる人だと思います。認知症の有無に関わらず、被介護者の自尊心や人としての尊厳を大切にできる介護員でありたいものです。
親しみやすさを出すために言葉を崩して会話をするという考え方もありますが、敬語であっても親しみやすさは伝わると考えています。もし、喜ばれる介護員とはどのようなものなのか迷った時は、目の前にいる被介護者が自身に近しい家族、親しい友人の両親だと想像してみてください。そして、自分ならその介護員にどのようなケアを行ってもらいたいかという質問を自身に問いかけてみるのもよいかもしれません。
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