介護現場の認知症ケア~徘徊の対処法について~

公開日:2016.07.23

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徘徊という単語の意味には、「あてもなく歩き回ること」とあります。しかし、徘徊を行う被介護者にはその人なりの大切な理由が必ずあるものです。そういう理由で、徘徊時のケアでもっとも大事なのはその想いや行動を厳しく制限するのを避けることだと考えます。ここでは、介護現場における徘徊者への対処法について書きます。

認知症の方が徘徊をするとき

行きたいところへ行く、これは誰しもがもっている行動の自由です。現実にそれを叶えて差し上げられなくてもその想いまで制限するのは好ましくないでしょう。

認知症を患っている被介護者はその判断力や記憶力の低下から、自分の行きたい場所への手段を自身で判断することが難しくなっています。行きたい場所や目的ははっきりしているのに、どうすればそこにたどり着けるのかわからない、そんな不安な状態にあると考えてよいでしょう。

認知症を患っている被介護者は否定されることを嫌います。そのような状態のときに他者から強い叱責や否定が加わると介護者自身の手で認知症の進行を早めてしまう結果になりかねません。

想いとその手段が結びつかず、目の前に信号があるから渡る、バス停や電車の駅を見つけたから乗る等、ここに行きたいという思いとその行動とのちぐはぐさから行方知れずになる被介護者が多いのも現実です。

認知症被介護者の徘徊の特徴

徘徊の中でも特に多いのが、自宅に帰りたいという帰宅願望でしょう。家族の夕飯をつくりに帰りたい。子供を迎えに行く時間だ。仕事が終わったから家に帰る。等、過去の生活習慣に基づいて行動しようとすることが多いと思われます。

その他には失くした物や人を探す、他の被介護者の不穏と呼ばれる状態に接して「ここにいたくない」と感じる等、その行動の源は個人差があります。一見理由無く動いているように見えても、その人なりの理由があるものです。すべての徘徊がそうではありませんが、被介護者の多くは時間軸が過去に戻ってしまっていることを理解して欲しいと思います。

認知症被介護者は環境の変化に敏感である

認知症を患っている被介護者は特に環境の変化に違和感を覚えやすいものです。そこから来る不安感や焦燥感、今までの生活環境や生活習慣との違いに戸惑い、元の生活環境に帰りたい、帰らなければと行動を起こす場合があります。

認知症ケアの中に、五感を刺激する、というものがあります。視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五つです。

施設内に個人のスペースが用意されている場合、自宅で使用していた家具や毛布、衣類を持ち込む(視覚と触覚)、慣れ親しんだ音楽をかける(聴覚)、日めくりカレンダーや四季に応じた飾りで「今」を感じていただくなど、五感を刺激することで被介護者も落ち着くことが多いです。可能であればその日めくりカレンダーも被介護者本人にめくっていただく習慣をつけるとよいかもしれません。

被介護者が過ごしてきた空間に似せて落ち着ける場所を提供できるように、ここが今の家だと思えるような素材や工夫が出来るととても良いと思います。

徘徊される高齢者との関わり方

ホームシックという言葉があるように、不慣れな環境に長くいると、慣れ親しんだ家に帰りたいと思うようになります。これは、認知症を患っていない人にも起こりえる普通の感情です。

徘徊を行う被介護者に対し、行動の制限や言動の否定をせず、可能な限り傾聴と見守りを行うようにしましょう。ただし自立歩行が可能な人、椅子等からの立ち上がりが可能な人は転倒防止の為の対策が必要です。転倒、骨折になれば被介護者のADL(日常生活動作 Activities of Daily Living)を奪うことになり、認知症の症状をより進めてしまう危険性があります。

施設内の歩行で歩くルートが決まっているならその動線上に椅子等を置かないようにしましょう。歩行に不安がある場合は椅子や飲み物をすすめ、可能な限り傾聴してみるのもよいでしょう。

その際には、なぜ歩き回るのか、ではなく例えば「どんな家に住んでいるのか?」「家には誰が待っているのか?」また、食事を作りに帰らなければと言われた場合は「今日の夕飯は何を作るのか?」など、問いの種類に正解はありませんので、是非介護者自身のオリジナルな質問を見つけて欲しいと思います。

会話を続けるうちに傾聴からくる安心感で帰宅願望が落ち着く場合もあります。被介護者との時間軸、心のチャンネルを合わせ会話することを心がけてみてください。

認知症の症状の中には短期記憶の低下もあります。自宅に帰りたいと訴え傾聴し落ち着いたように見えても、数分後にはその会話の記憶を失い、同じように自宅に帰りたいと訴えてこられる場合もあるでしょう。介護者自身には傾聴した記憶があるので、その繰り返しに疲れてしまうかもしれませんが被介護者にとっては「今の会話」が初めての会話なのです。気持ちのリセットを行い新たな気持ちで会話を心がけるようにしましょう。

とはいっても介護者も人間ですのでどうしても気持ちのリセットがつかない場合は、無理をせず他介護者と連携をとりケアにあたるのもひとつの手段だと思います。結果として被介護者を否定せずにすむのなら、それもひとつの有効的なケアだと言えるでしょう。

まとめ

理由の無い徘徊はありません。帰宅願望というはっきりしたものから漠然とした不安を感じ歩き続ける場合まで、その原因も理由も様々です。ひとくくりに「徘徊」で片付けず、被介護者個人に寄り添った傾聴、不安を取り除くお手伝いを出来るよう心がけましょう。

施設内での徘徊の場合、どうしても外に出ないと落ち着かない場合もあります。その際は他介護者と連携し、人員が許すのであれば被介護者に付き添い少し外に出るのも良いでしょう。その際には介護者は携帯端末等緊急時の連絡手段を持ち、すぐに腰掛けられる場所があるか、今の体調はどうか、歩行は安定しているか等、安全面をしっかりチェックした上で、短時間近距離を目安に行うと良いと思います。

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