入浴には様々な効果があります。体を清潔に保つ事はもとより、心のリフレッシュにもなります。また湯船につかることで関節や筋肉がほぐれ、痛みのある部分も可動域を広げることができます。他にも肌を清潔に保ち血行がよくなることによる褥瘡(じょくそう)予防にも繋がるなど、たくさんのメリットがあります。
しかし、入浴時には危険が多く潜んでいるのも事実です。今回はその中でも、入浴拒否の方の声掛け例について説明いたします。
毎日帰宅願望が強く、家に帰っていると思っている認知症の利用者様は案外沢山いると思います。その利用者様は「家でお風呂に毎日入っているから別にここで入らなくてもいい!」と言いませんか?そんなときの対処法をお教えします。
まず用意するのは聴診器です。女性の場合は羞恥心があるので同性がやると効果が期待できます。「帰る前に健康診断があります」と声掛けを行い、服を脱いでもらうからという理由で浴場に案内します。実際に上半身裸になってもらい、胸の音を聴きましょう。難しい方は背中からも胸の音を聴くから、と焦らずゆっくり脱いでもらいましょう。
次に下半身です。まずはズボンを下からまくり、「乾燥していますね。乾燥止めの薬を塗るので少し肌を綺麗にしましょう」と声をかけます。その呼び掛けに利用者が応じれば裸にすることができます。シャワーを流し、「髪に何かついています。とりますか?」と声掛けをし、頭を洗いましょう。そのあと体を洗い終わる頃には湯船につかりたいと思ってくださっているはずです。是非お試しください。
声掛け次第でなんとか入浴していただける方もいれば、もうとにかくお風呂という単語を聞いただけで拒否が強い方はいらっしゃいませんか?そういった方は、こちらの自衛も大切になります。特にここでは機械浴の場合をご紹介します。
まず事前準備が必要です。浴場で危ないものや投げられるもの、掴めるものは全て遠ざけます。手すりはしがみついて離れなくなるので、あえて手すりから離れてください。入浴という単語を出さずに脱衣所に誘導します。この時パーテーション(目隠し)で浴室を隠してしまえるといいでしょう。「着替えしますね」と声掛けを行い、ゆっくりと洋服を脱がせます。それすら暴れる方は半分脱がせ、手を外す所まで来たら一度引いてみるのも手です。
さて脱がせたらストレッチャー(機械浴用車椅子)に座って頂かなければなりません。もうここまで来たらお風呂だということがバレますね。暴力が始まります。暴言暴力飛び交いますが使い捨て手袋を予め二枚重ねにしておくだけで手を守れます。無理に一人では行わず、安全な背後から一人、足元一人の二人で介助し移乗するのが理想です。
その後シャワー前に連れていきます。この時も少し顔にかかってしまうので申し訳ないのですが離れたところからシャワーをかけます。ホースを掴まれてしまうと思わぬ事故につながります。完全に視界の外の背後からシャンプーを行い、体を洗う時は一人の職員が手袋をした手を強くにぎらせ、この時噛みつかれないように気を付けましょう。
ようやく浴槽ですが、無理に暴れる方に浸かっていただくと、またしても思わぬ事故につながります。慣れるまではシャワー浴を行いましょう。浴槽に入って静かにしているようでしたら入浴しても構いません。
最後は洋服を着ていただきましょう。できればここで全く別の職員に変わってもらいましょう。使用者が「酷いことをされた・・・」と、無理やり入浴させられたことについて話されるので、優しく声掛けしてください。
以上、入浴拒否の利用者様への対処法をまとめました。お困りの際はぜひお試し下さい。
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