すでに、介護保険制度が欠かせなくなっている超高齢社会のニッポン。そもそも「介護保険制度」ってどんなものだろう? どんなメリットがあって自分たちの暮らしにどんなふうに関係するのだろう?という疑問を、わかりやすく紹介します。
1.そもそも介護保険って何?
2.介護保険料はいくら払っている?
3.ココが改正ポイント!
4.一般的な使い方、認定を受けるためには
5.なんと!住宅改修費用にも使えるんです!
6.介護保険サービスの「認定度」って何? 利用するにはどうするの?
7.負担限度額の上限っていくら?
8.病気にも適用される「特定疾病」、覚えておきましょう!
9.お金が戻ってくる! 介護保険サービスで医療費控除が受けられます!
もしかして、あなたは「そういえば、最近はあちこちで高齢者を見かけることが増えたなあ」と思っていませんか? そう、その通り。増えているんです。実際に、65歳以上の人が人口の21%を超える今の日本はまさしく「超」がつく高齢社会です。だからこそ、2000年から介護保険という制度が導入されたのです。それでは、介護保険制度というのはどんな制度なのでしょうか。
厚生労働省のホームページの内容を読み説くと、これからは介護を必要とする寝たきりなどの状態になる高齢者が増えてくるので社会全体で支える仕組みを充実させていきましょう、ということなのです。
ここで、内容を整理してみましょう。介護保険制度の重要なポイントは、2000年の導入前よりも利用者主体のサービスに変わったことです。以前は、介護が必要になった場合は行政窓口に申請し、その後で市町村が決めたサービス内容やプランに従う必要がありました。また、利用するサービス提供者も公的な団体以外は選べず、介護にかかる費用も全額自前でした。
それが、介護保険制度では利用者が自らサービスの種類や事業者を選べるようになり、介護サービスの利用計画へも参加できるようになりました。さらに、利用者の負担額も1割ですむようになったのです(2015年8月以降、一定額以上の所得がある高齢者は2割負担)。
その代わり、我々日本国民一人ひとりがその介護費用を負担することになっています。なぜなら、介護保険が「社会全体で支え合う」という仕組みをもっているからです。ちなみに、この介護保険制度は3年に一度変更されるのでチェックするようにしましょう。
ここでいう「保険料」というのは、介護保険制度を保ち支え合うために日本国民が払うべきお金「介護保険料」のことを指します。これが、介護保険制度の財源の半分を占めているのです。財源を100%とすると、我々国民が払う介護保険料が50%で、あとの50%は、国庫20%・都道府県12.5%・市町村12.5%・調整交付金5%となっています。
あなたは毎月、介護保険料をいくら払っていますか? 介護保険料を払う人は、大きく分けて2種類になります。「第1号被保険者」が65歳以上の人で、「第2号被保険者」が40歳から64歳以上の人です。ちなみに、この介護保険料の金額ですが、導入された2000年から増え続けているのです。
全国平均で言うと、最初の3年を指す2000~2003年までの「第1期」に2,911円だったのが、第5期となる2012~2014年では4,972円となっています。なぜでしょうか? それは、言うまでもなく給付額が増えているからなのです。2000年度には3.6兆円だったのが、2013年度には9.4兆円となっています。そう、少子高齢化の波は、私たちの生活に対して介護保険料の数字にはっきりと表れているのです。
3年に一度改正される介護保険制度ですが、さて、2015年度の内容は私たちの生活にはどのように影響しているのでしょうか。大きなポイントはいくつかあるのですが、まずは負担率の上昇についてお話ししましょう。
今年(2015年)8月から介護保険制度を利用する第一号被保険者(65歳以上)のうちで所得が160万円以上の人は、自己負担額が従来の1割から2割へ増えてしまったということです。実は、このいわば「聖域」とも言える利用者の自己負担率は、介護保険制度が導入された2000年からずっと1割のままでした。しかし、今回は利用者の急増に対応するため(と、厚生労働省は言っているようですが)、「改正介護保険法」なる法律が成立してそういうことになったわけです。
該当するのは、実に65歳以上の約5人に1人。負担能力を考慮した特別な救済措置で1割になることもあるとは言え、国民の負担が軽減される雰囲気は残念ながらなさそうです。
二つめに、特別養護老人ホームなどへ入居する際の補助金の条件が厳しくなったことです。従来は所得要件が住民税非課税世帯だけだったのが、8月からはそれに加えて「夫婦で世帯を分けている場合は両者とも住民税非課税の者でなくてはならない」「預貯金などが単身なら1,000万円以下、夫婦なら2,000万円以下でなければならない」となりました。
つまり、現在の日本の介護保険制度においては、利用者にとっても被保険者にとっても経済負担が増え続けているのです。
それでは、もしも実際に介護保険によるサービスを利用することになった場合、どうすればいいのでしょうか。厚生労働省のWEBサイトの内容をわかりやすく整理してみました。
*受けられるサービス
・介護サービスの利用にかかる相談、ケアプランの作成
・自宅で受けられる家事援助等のサービス
・施設などに出かけて日帰りで行うデイサービス
・施設などで生活(宿泊)しながら、長期間又は短期間受けられるサービス
・訪問・通い・宿泊を組み合わせて受けられるサービス
・福祉用具の利用にかかるサービス
*申請から認定までの流れ
①住まいの市区町村の窓口で、要介護認定の申請をします。
②市区町村からの依頼で、主治医がご本人の心身の状況について意見書を作成します。
③一次判定を受けます。
*主治医の意見書がコンピューターで推計処理されます。
*介護認定調査員などにより、心身の状況に関する調査を受けることになります。
(基本調査74項目はコンピューターの推計へ、特記事項は二次判定で判断)
④二次判定を受けます。
*介護認定審査会による審査が行われます。
⑤認定されると、認定通知書が届いて要介護の認定が受けられるようになります。
*申請から認定の通知までは原則30日以内です。
介護保険で受けられるサービスは、全部で24種類52サービスあります。ここですべては書きませんが、今回着目したのは、住宅改修の費用にも適用できるということなのです。厚生労働省のWEBサイトによると、介護を必要とする人が介護のために自宅に手すりを取り付けた時は、理由を書いた書類を申請して工事完成後に領収書等を提出すれば、なんと実際の住宅改修費の9割相当額が戻ってくるというものです(支給額は、支給限度基準額20万円の9割となる18万円が上限)。これは、もしも必要になればぜひ覚えておきたいことだと言えるでしょう。
対象となる改修の内容は、(1)手すりの取付け、(2)段差の解消、(3)滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更、(4)引き戸等への扉の取替え、(5)洋式便器等への便器の取替え、 (6)その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修 となっています。これからの改修を考えておられる方は、ぜひケアマネジャーさんに相談してみてください。せっかくの介護保険制度ですから、ぜひ活用しましょう。
ここで言ういわゆる「認定度」というのは、正確に言うと「要介護度」のことなのです。介護サービスをどれぐらいのレベルで行う必要があるかを判断するもので、必ずしも病気の重さと要介護度は一致しないケースもあります。
たとえば、認知症の人の場合を見てみましょう。症状そのものは深刻でなくても、身体が良好な場合は徘徊などで手間がかかるので要介護度は上がります。しかし逆に、症状が深刻であったとしても身体に問題があれば寝たきりなので介護の総量としては負担が少ないために要介護度は大きく上がりません。では、実際に介護が必要であることを認定してもらって介護サービスを利用するためにはどうすればいいのか、基本的なことをシンプルに説明しましょう。
まず、大きく分けると要介護度の判定には2つの種類があります。
一つめは、「介護の手間にかかわる審査判定」です。介護サービスが必要な人を対象として、その必要度を客観的で公平な判定を行うために、コンピューターによる一次判定とそれを原案として保健医療福祉の学識経験者が行う二次判定が行われるのです。
ちなみに、要介護度は全部で6レベルあります。要支援1、要支援2と要介護1、要介護2、要介護3、要介護4、要介護5、となっており、いずれも要介護認定等に関わる基準時間の量で決められています。
二つめは、「状態の維持と改善可能性に係わる審査判定」です。これはどういう意味かというと、介護が必要になる前に、つまり増大を続ける介護費用の発生が防げるのであればそのために「介護予防重視の姿勢」として給付金を出しましょうということなのです。
今は介護を必要としていなくても将来的に介護が必要になりそうな人を対象として、心身の機能や生活機能の低下を防止するために運動器の機能向上プログラムや閉じこもりなどへの対応をするのが、この審査なのです。ひとことで言えば、介護度が比較的低めの「要支援1」の方が対象となります。ですから、「うちはまだ大丈夫」と思わずに、ケアマネジャーさんなどに気軽に相談してみてはどうでしょうか。
介護が必要な方がおられる家庭では、精神的・肉体的かつ経済的な負担を強いられているのが現状です。そこで、介護保険制度では月々の負担の上限が設けられています。1ヵ月に支払った利用者の負担額の合計が一定の上限を超えた時は、超えた分が払い戻されるのです。ちなみに、一般的な所得の方の負担の上限は37,200円です。ぜひ、毎月チェックしておきましょう。
*世帯内のどなたかが市区町村民税を課税されている方は、37,200円(世帯) 。
*世帯の全員が市区町村民税を課税されていない方は、24,600円(世帯) 。
・老齢福祉年金を受給している方は、24,600 円(世帯) 。
・前年の合計所得金額と公的年金等収入額の合計が年間80万円以下の方等は、15,000円(個人)※
*生活保護を受給している方等は、15,000円(個人) 。
※ 「世帯」とは、住民基本台帳上の世帯員で、介護サービスを利用した方全員の負担の合計の
上限額を指し、 「個人」とは、介護サービスを利用したご本人の負担の上限額を指します。
実は、この負担限度額に関して今年の8月から介護保険制度が改正されています。その内容とは、特に所得の高い現役並み所得相当の方がいる世帯の負担が増えるものです。従来の月々の負担上限が37,200円(世帯)だったのに対し、8月からは44,600円(世帯)に引き上げられました。具体的には、同一世帯内に課税所得145万円以上の65歳以上の方がいる場合となりますので、知っておいてくださいね。
介護保険では、病気の種類によっては介護保険の認定対象となります。覚えておくと参考になるかもしれないので、厚生労働省のWEBサイトにあったものを列挙しておきますね。基本的な考えとしては、65歳以上の高齢者に多く発生しているが40~65歳未満でもかかりやすく加齢と関係あると認められた病気や、3~6ヵ月以上継続して要介護や要支援が必要とされる病気です。なるほど、理にかなっていると思う内容です。
1 がん【がん末期】※
(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
1 関節リウマチ※
2 筋萎縮性側索硬化症
3 後縦靱帯骨化症
4 骨折を伴う骨粗鬆症
5 初老期における認知症
6 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病※
7 【パーキンソン病関連疾患】
8 脊髄小脳変性症
9 脊柱管狭窄症
10 早老症
11 多系統萎縮症※
12 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
13 脳血管疾患
14 閉塞性動脈硬化症
15 慢性閉塞性肺疾患
16 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
(※印は平成18年4月に追加、見直しがなされたもの)(※印は平成18年4月に追加、見直しがなされたもの)
「介護に費用がかかり過ぎて、どうしよう!」と思っておられる方は多いと思います。しかし、ご安心ください。払い過ぎた医療費は戻ってくる可能性が高いのです。国税庁のホームページでは、具体的な内容が公開されていますので参考にしてください。
*医療費控除の対象となる介護保険制度下でのサービスの対価について
・居宅サービスの場合
・施設サービスの場合
詳しく知りたい方は、「税についての相談窓口」からお電話で問い合わせてみてはいかがでしょうか。
以上、ざっとではありますが、介護費用を減らすワザを紹介してみました。いかがでしたでしょうか? 言うまでもなく、ますます少子高齢化に向かう日本において大切なことは、一人ひとりが介護費用を減らす以前にいかにして介護を必要とする人を減らすかを真剣に考えることですよね。これらの情報が、皆様のご参考になれば幸いです。
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