デイサービスでの関節可動域練習は、ただ単に関節の動く範囲を広げるだけでなく機能面、健康面、精神面へのアプローチが行えるとても大切なプログラムです。
デイサービスの特性と条件をしっかり踏まえてリハビリを行う事が重要です。
何かの怪我や病気で身体を動かす事ができない期間があると関節の動きが損なわれてしまい、動かそうと思っても動かしにくい、あるいは痛みが出てしまって動かせないなどの状態になります。
そうなると、関節を動かすことが減ってしまい、どんどん関節の可動性が損なわれるという悪循環に陥ります。
また、関節が動かしにくい、痛みを伴うなどで生活に支障をきたす可能性があります。
高齢者では転倒のリスクが高くなったり、寝たきりになることもあります。
関節の動きだけでも精神的に疲れてしまい、様々な二次的な障害を引き起こす可能性があります。
このように、動きにくく痛みを伴う関節を動かすリハビリのことを「関節可動域練習」といいます。
デイサービスでは、理学療法士がリハビリを行います。
デイサービスでのリハビリは基本的に数十分です。
その短い時間に関節可動域練習を重点的に行ってしまうと、他の筋力トレーニングや動作練習などを行う時間がなくなってしまいます。
そこでリハビリ前の空いている時間にストレッチを行ってもらうように声かけをすることがあります。
多くの利用者は、「リハビリは運動だ」と理解している方が多いですし、運動前には「準備体操が大切である」ことも理解している方も多くいます。
事前にストレッチをしてもらって少しでも筋肉や関節をほぐしておいてもらうことで、時間を有効活用することに繋げることができます。
ストレッチでは難しい運動を要求するのではなく、椅子に座った状態で行えるもので十分です。
デイサービスではレクリエーションの時間などもあるので、その際に利用者全体にストレッチが広まるように皆でストレッチ体操を行うことも有効です。
そうすることで、自宅での自主トレなどにも繋がり、身体の柔軟性を維持・向上させ、転倒などを事前に防ぐことにも役立ちます。
理学療法士が行う関節可動域練習もポイントを見極めなければいけません。
どの動作のどの時に、どこの関節の動きが損なわれているのか、痛みが出ているのかを適切に評価することでアプローチにつながっていきます。
関節というのは、全身に存在します。高齢者であれば、手足の関節のみならず、体幹という「胴体部分の関節」も硬くなっている方が多いです。
胸の胸郭の動きが少ないと肺の活動の妨げになってしまったり、腰が曲がりやすくなってしまったりします。
多くの施設ではクッションなどを用意してくれているところもあるので、うつ伏せ寝が出来る方はうつ伏せ寝、出来ない方は横向きで胸郭の動きをチェックしてみることもできます。
胸郭の動きが出るだけで息がしやすくなったとか、背筋が伸びて坐りやすくなったり、歩きやすくなったり機能面や健康面にもアプローチできる上に、息がしやすくなることでとても気持ち的に楽になる方も多いので精神面へのアプローチも行えます。
ストレッチや関節可動域での成功体験を積み重ねながら自主トレーニング方法を指導していくことで、前向きなモチベーションにつながり、与えられたリハビリだけでなく、自ら積極的にリハビリに取り組もうとしてくれる方が増えます。
関節可動域練習はとても重要なリハビリの1つです。
関節の動きを維持するだけでなく、筋肉の柔軟性を高めたり、新陳代謝も高める事にもつながります。
そして、怪我を事前に防ぐ事ができ、転倒予防にもつながります。辛い痛みの原因にもアプローチができるので、精神的苦痛の緩和にも有効です。
適切な評価を行い、利用者の負担にならない関節可動域練習を行いましょう。
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