主な認知症の種類には、
があります。
そして、医師の指示で1人1人の症状にあった薬が処方されています。
介護保険サービスも、それぞれの認知症の症状に焦点を当てて、展開されています。
認知症の進行状況により、自宅で生活することが難しい方は特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホームなどを利用することができます。
また近年は、在宅で介護を受けながら過ごしていけるように支援を行う、認知症に特化した通所介護(デイサービス)、医師の管理のもとでリハビリを行いながら支援する通所リハビリテーションなどが充実し始めています。
認知症の方に対する技法としても様々な方法があります。
例えば、最近では”見る・話しかける・触れる・立つ”、これら4つの手法を組み合わせた認知症ケア「ユマニチュード」が話題になっています。
医療面でも介護面でも、認知症の方に対するケア・サポートは随分と充実してきました。
そこで今回は、さらに認知症の方のケアやサポートを確かなものにするために、介護職に就いているなら知っておきたい、水分補給の重要性についてお話します。
成人が1日に摂るべき水分量(食事から摂れる水分以外)の目安は、最低1500mlです。
毎日排尿・排便・発汗などにより、想像以上に体内の水分は排出されています。
その量は約2400~2800mlで、排出した水分は、補給して補わなくてはいけません。
もし、水分補給が追い付かず、水分の排出量ばかりが多くなると、いわゆる脱水状態に陥ってしまいます。
それにより熱中症や高Na血症(高ナトリウム血症)など、高齢者でなくとも命に関わる症状を発症します。
そのため、目安の量に基づいて、適宜水分補給を行うことが、とても大切です。
これは、高齢者に限らず、全ての年代の方に同じことが言えます。
認知症高齢者は、年齢や抱えている様々な疾患の影響で、身体機能が低下していきます。
そんな中で、疾患が悪化して重体になる方もいらっしゃれば、疾患があっても元気に過ごされている方もいらっしゃいます。
この違いははっきりとは申せませんが、熱心に打ち込める趣味があるなど、精神的に前向きで元気な状態であること、そして身体の丈夫さが関係しています。
ここで1つ再確認しておきたいのが、認知症高齢者の方が「食事や水分をしっかりと摂取しているかどうか」という点です。
食事をしっかり規則正しく食べ、水分もしっかりと摂っていると、気持ちも明るくなりますし、疾患があっても栄養面では偏りなく健康でいられます。
食事や水分の摂取をきちんと管理されている方は、年齢相応の物忘れがあったとしても、認知症とまではいかず、自身でしっかり生活をされている方が多く見受けられます。
「規則正しく食事や水分を摂ることくらいで、今さら身体の状態は変わらない」と思っている方もいらっしゃるかも知れませんが、実は体にも心にも、とてもいい影響を与えています。
若い世代や、高齢でも心身ともに健康な方は、「喉が渇いたな」「少し汗をかいたな」と自覚した時に、自分から積極的に水分補給を行うことが可能です。
しかし、認知症高齢者の方の場合は、なかなか自分で水分補給を行えません。水を飲みたくない時には、水分を欲しがらないですし、「夜にトイレに行きたくないから」と、夜間の水分摂取を控えてしまったりします。
水分を摂る量が少ないと、認知機能の低下が起こる可能性が高く、認知症の悪化につながる恐れがあります。
症状を悪化させないために、特に自分では水分補給を意識することが出来ない認知症の方の水分補給に関しては、介護士や家族など、周りのサポートが必要になります。
夜間にトイレに行く、よく失禁してしまう等、何か問題があっても、極端に水分の摂取量を控えてはいけません。
しかし、やみくもに水分を摂らせようとすると、水中毒になる恐れがありますし、心臓や腎臓に負担をかけてしまう可能性があります。
必要であれば医師に相談し、その人に必要な水分摂取量を把握することが大切です。
とある介護老人保健施設の認知症棟では、朝・昼・晩の食事と15時のおやつの時に計4回認知症高齢者の方にお茶を提供していました。
1杯あたりの水分補給量は約200mlだったので、1日に食事以外で提供される水分量は、単純に考えて約800mlです。
先述しましたが、成人に必要な水分補給量の目安は、食事から摂れる水分を除いて約1500mlです。
つまり、1日あたり800mlの水分補給量では、全然足りません。
このようにして脱水症状を引き起こし、一時期は1カ月で5 人も病院に入院する事態になってしまいました。
当時の施設の職員は、「本人が飲まないというから、湯飲みを下げてしまった」と話していたとのことでした。
つまり、認知症高齢者の方は提供されたお茶を全部飲んでいたわけではなく、目安量の1500mlはおろか、800mlにも満たない摂取量だったのです。
水分をきちんと摂らなかったことが原因で、認知機能が低下し、認知症の症状も進行したため、徘徊や暴力行為が見える方もいました。
食事まで拒否するようになり、体力が落ちて転倒してしまった方もいます。
この施設は、水分補給の大切さを理解が十分に行き届いておらず、結果的に、認知症の方の脱水を引き起こし、認知機能の低下や食欲減退にもつながってしまいました。
上手に水分補給を勧める方法を身につけていれば、これらの事態を未然に防ぐことは出来たはずです。
認知症高齢者の方に対して、介護士が「飲もう」と声をかけても拒否をすることがあります。
そんな時には、しつこく話すのは逆効果になってしまいます。
そこで、機械的に水分補給を勧めるのではなく、本人との会話の流れで自然と「お茶を飲もうかな」と思って頂けるような、間接的なアプローチが必要になります。
時には、介護職員が「お茶飲み友達を探している」という声掛けで、一緒にお茶を飲むことも、とても有効なアプローチです。
また、冷水などではなく、好みに合わせて白湯や電解質を含んだ水分を提供して、補給して頂くこともおすすめです。
認知症であっても、認知症でなくても、脱水や意識障害などを起こさないように、水分補給は小まめに行うことが必要です。
薬に頼るだけではなく、水分補給など普段の生活に気をつけることでも、認知症の悪化の防止につながります。
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