日々の変化が大きい高齢者の介護において、チームでより良い個別支援を行うために、申し送り業務を行います。基本的には口頭で利用者の状況などを伝えますが、口頭だけではなく、記録として残されている日誌を基に申し送りを行います。その際には、記録がとても重要となり、記録なしでは申し送りだけでなく、より良い介護の展開が出来ないと言っても過言ではありません。
口頭伝達は、書く手間がいらず簡単な伝達手段で、伝えたい事に優先度や重要度をつけて説明することができ、素早く短時間で伝えられるのがメリットです、言葉による伝達は内容が変化し、不正確なものになりやすく、膨大な情報から大切な情報を選択するには、専門的知識と経験が必要とされます。情報を伝え、共有するためには、口頭伝達と記録の両方が大切で、両者は補完しあうものです。
介護施設では、50人から100人ほどの入居者を介護職員が交代で介護にあたっています。例えば自分が行った入浴介助などは、自分にしかその時の様子はわかりません。しかし、その入居者に対しては、介助する介護職員が変わっても同じ介助を行う必要があります。また介護職員が入居者から希望を受けた場合には、他の職員にも伝えなければなりません。
また、体調不良や傷やケガが見つかった場合にも全介護職員に周知しておく必要があります。
介護の現場では1人の介護職員が24時間365日介護にあたることが難しいので、1日のうちに職員が入れ替わる時間に、リレーのバトンの様に、その日にあった伝えるべき出来事について申し送りを行っています。
①利用者の個別理解を深めるため
介護福祉活動を行う場合、どうしても時間が限られてしまいます。そのため時間を気にするあまり、利用者の状況を見落としやすくなります。利用者の自立支援という介護本来の目的が果たせなくなります。
②介護計画の立案、見直しのため
記録された具体的な情報をもとに介護計画が立案され、実践されます。実践された介護内容、利用者の反応があらたに記録されます。日々変化する利用者の状況を記録することによって、利用者の変化を理解し、柔軟に対応していくことがより良い介護の実践に繋がります。
③関連専門職との連携を深めるため
一人の利用者さんの生活を援助するためには、施設職員だけではなく、さまざまな職種の専門家が関わっています。(例、介護支援専門員、看護師、医師など)
④一貫した介護の継続のため
介護はチームで行うものです。介護保険制度の下では、介護支援専門員が作成したケアプランに基づいてサービスを提供していきます。介護者が交代することによって、利用者への対応がその都度変わることがあってはいけません。
利用者を取り巻く介護チームスタッフが一貫した介護計画を実践していくためには、すべての職員が同じ情報を共有し、その利用者のために何を行う必要があるかを熟知しなければなりません。
⑤記録に残すことで自身を守る
介護の現場では、利用者が認知症であったり、高齢による骨粗しょう症から転倒して骨折してしまう事故等もなかなか防ぐことが難しいという現状があります。そのような時に家族側が、その時の対応を教えてほしいと希望されることもあります。
家族の姿勢は当たり前の行動ですから、そのようなときにも記録を残しておくことで事実を伝えることもできます。介護職員にとっての記録は、自分が該当者になって責任を問われたときに、自分を守ってくれるものだということを忘れずに取り組んでいきましょう。
申し送り業務の際には、記録を基に口頭で正確に伝えなければなりません。記録というものはとても重要となります。記録は、利用者の状況変化や支援内容、生活状況を記述したものであり、介護従事者は利用者と過ごす時間も多いので、一つ一つの場面でしっかり利用者と向き合うことが重要です。
一人ひとりに寄り添った支援を提供するために記録は必要不可欠なものですが、利用者が「何を感じ、何を考えているのか」ということをしっかりと把握し、サポートを行なっていくことが求められます。
またその情報を職員、関連機関・家族に共有することにより、利用者、家族と職員との信頼関係が築きあげられ、関連機関との連携が深まり、利用者への意識や支援の質、技術が向上し、利用者に対するより良いサービス提供へと繋がっていくと思います。
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