施設と聞くと毎日同じことの繰り返しというイメージが大きいのではないでしょうか。施設毎に、入居者と介護員との比率の差で出来ること出来ないことがあるのは確かですが、その中でも最大限日々の楽しみを提供できる介護員でありたいものです。
ここでは、入居者にとっての生活の質の向上、充実度につながるレクリエーション、余暇の過ごし方やその内容について紹介します。
「施設でのレクリエーション」と聞くとどんなものを思い浮かべますか?歌や手遊び、簡単なゲームなど、こんなところでしょうか。これらには日常の隙間時間にすぐ行える利点があります。しかし、実際はもう少しバリエーションが豊富です。いくつかご紹介しましょう。
先に挙げた大人数で行えるものから、入居者の個性に合わせて少人数で行うもの、「生け花」「折り紙」「陶芸」「ヨガ」、少し変わったところでは外部の飲食店と連携して月に一度喫茶店を施設内にオープンする。というイベントを企画している施設もあります。
どれも全入居者一斉にとはいきませんので、希望者もしくは月ごとに参加者を振り分ける等工夫が必要です。また、入居者の病状に合わせ、生け花や陶芸などは介護員が付き添ってその補助にあたる場合もあります。
ここで、「レクリエーションは義務ではなく任意だ」という事を覚えておいてください。その日の体調や気分によって「今日は参加したくない」と言われる入居者に無理強いしてはいけません。中には、自分から進んで参加しようとせず、遠巻きに眺めて、職員から強く誘われるのを待っている入居者もいらっしゃいます。
見極めをした上で、その駆け引きを「楽しむ」姿勢で声掛けが出来るのが一つの理想です。仏頂面で誘ってくる介護員と明るい表情で誘ってくる介護員では、入居者の反応も違ってくるのではないでしょうか。
季節の行事には、施設内で行うものと、外出して行うものとの二つに分かれます。外出で多いのは春のお花見、秋の紅葉狩り等です。春から初夏にかけて、梅、桜、藤、バラ等見ごろを迎える花が多いので、比較的外出を企画しやすい時期です。
真夏や真冬の外出は入居者の体に大きな負担となりますので、その時期の集団での外出は避ける傾向にあります。その他には、スーパーや複合商業施設に赴いて入居者の好むものを買い求める場合もあるでしょう。外出は入居者の意外な一面が見られたり、普段とは少し違う様子を発見出来たりと、介護者にとっても良い刺激となります。
安全面をきちんと確保した上で、可能な限り入居者の楽しい、嬉しいという感情を共有してください。仕事で訪れている事を忘れてはなりませんが、終始緊張で終わるのはとても勿体ない事です。
気候のいい時期を選び、場所の下見や当日の介護員の人員配置、参加する入居者の入浴日の確認と調整、車の手配、貴重品の確認、各入居者の薬や備品の持ち出しチェック等、事前の準備は多岐にわたります。当日の人員は外出組と施設組に分かれますので、どの介護員が参加するか等の事前の確認をしておきましょう。
外出先の下見については、予定している外出日と同じ曜日、同じ時間に行うのが理想ですが、実際に現地に赴くことが不可能な場合でも、チェックして欲しいポイントの一つが、お手洗いの場所と設備の確認です。手すりの向きや仕様は施設で使用しているものとどう違うのか、車いすと大人二人以上が入れるスペースのある個室がどこにいくつあるのか、そこに車いすで行くためのルートは確保されているのか、を確認しておきましょう。
四肢の一部に麻痺等があれば普段は手すりを使っての一部介助が多いことでしょう。四肢のどの部分に麻痺があるのか、手すりの向きが変わるだけでケアの仕方も変わってきます。
そういった、あの入居者がここを訪れたらどのルートを使えるか、車いすを使用した場合は、という具体的な視点で下調べをすることで、当日になって慌てることなく安全なケアが行えますのでケアに不慣れなうちは特に有効な手段といえます。
施設で行う行事は主に、お正月には門松を飾り鏡餅、二月には節分、というように昔ながらの四季に沿うものが多くあります。一日のほとんどを屋内で過ごすことの多い入居者に、四季の移ろいを感じていただく為の大切な行事です。鏡餅で冬、鯉のぼりを飾れば初夏を、秋には紅葉を施設内に飾る等、四季を感じられる工夫をしていくのも季節感を損なわない為に効果的です。
また、「夏には施設を開放しての夏祭りで地域交流を開催する」「年に一度入居者の家族を招いて食事会をする」などの大掛かりなイベントも施設によっては行っています。施設が主催している地域交流のイベントは、一般に開かれているものが殆どですので、機会があれば他施設のものに参加してみるのも良いでしょう。
普段と違う雰囲気の中で、入居者の体調に何らかの変化が起こる場合もあり得ます。特に空調の効いた屋内から屋外への外出の際は、表情や口調、発汗、発熱の有無などに気を配りましょう。施設の行事の中には事前準備が大掛かりなものもあります。
しかし他介護員と連携してそれを成し遂げた時の達成感、入居者の楽しむ姿というのはとても励みになります。少しの非日常を味わうことで介護員自身も気持ちをリセット出来たり、リフレッシュ出来たりと仕事へのモチベーションアップにも繋がることでしょう。
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