麻痺のある被介護者に対する更衣介助の方法

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被介護者への更衣介助

被介護者への更衣介助を行う前にしておきたいのが、室温の確認、そのときの体調、被介護者に衣服を着替えることを伝える、という基本的な事項です。介護者の爪は切りそろえられていますか?更衣中は皮膚に直接触れる機会が多いので被介護者の皮膚を傷つけないようにしましょう。

特に冬場は身体を冷やしやすいので、手早く更衣が行えるよう、事前に準備を整えておきます。そのときの体調や気分によって被介護者自身で行える更衣の幅も変わってきますので、臨機応変に対応できるよう心がけたいものです。意思の疎通が行えるのであれば、個人の意思を尊重して可能な限り衣服を選んでいただきます。バスタオル等を上からかけられるものを用意し、体温低下を防ぐ対応も必要です。

プライバシーと羞恥心に配慮してカーテンやドアを閉じることも忘れないようにしましょう。

片麻痺のある方への更衣介助の注意点

四肢のいずれかに麻痺や痛みがあるときの更衣は、原則として「脱健着患」と言われています。衣類を脱ぐときは健側から、着るときは患側から着ることで患部に負担をかけずスムーズに更衣介助が行えます。ただしこれは基本ですので、被介護者の症状によっては例外もあり得ると認識しておきましょう。

ひと口に片麻痺といっても、その四肢の可動域には個人差があります。ただし、普段動かす機会の少ない患側の筋肉や関節はとても脆いものです。無理に患側を引っ張ると関節の脱臼につながる恐れがありますので注意してケアにあたるようにしましょう。

更衣の一部介助の手順(座位・上衣前開き)

被介護者の体調を確認し座位をとります。この場合転倒しないように健側で身体を支えられる手すり等の傍で行うとより安全です。不意の傾きに対応できるよう、更衣中は可能な限り患側に立つようにしましょう。

上衣のボタンを外し、患側の服を肩まで下げ、被介護者に健側の腕を袖から全部抜いてもらいます。この時介護者が袖口を持つとスムーズに腕抜きが行えます。健側の手で患側の袖を抜き、上半身の脱衣が完了です。

事前にバスタオルの準備があれば肩に掛け着衣へと移ります。これには体温低下を防ぐとともに羞恥心への配慮も含まれています。袖をたぐり寄せひとまとめにして患側の手首、腕を通し肩まで引き上げます。もし患側の袖口を被介護者自身で通すのが難しい場合はまず介護者の手に患側の袖をすべて通し、その手で患側の手を迎えに行く、という感覚で被介護者の手首に通します。袖をすべて被介護者の手に通し終えたら、袖を肩まで引き上げます。この時無理な力をかけて患側を引っ張らないよう注意が必要です。可能であれば被介護士にボタンを留めていただきます。

次に下衣の更衣ですが、ここでは手すり等に掴まることで立った状態を保てる場合の介助で説明します。まず安定した立位が取れているかを確認し、介護者は患側に立ちます。この後腰掛けることを踏まえ下衣を大腿部の真ん中あたりまでおろします。一度椅子に腰掛けていただき、バスタオルを下腹部から大腿部までひざ掛けのようにしておおいます。健側を脱ぎ、次に患側を脱ぎ、下衣の脱衣が完了です。

患側の更衣時に、足を上から掴み持ち上げるのではなく、踵を手の平で支え、下から支え上げるという方法があります。これは掴むという行為自体の嫌悪感への配慮、脆くなった皮膚や筋肉を指先という点の力で掴む事で被介護者の身体を傷つけないように、という理由によるものです。

次に清潔な下衣を患側から通します。上衣の時と同じく介護者の手に患側の下衣を通し足先を迎えにいく感覚で行ないます。健側の足先を通し大腿部の上のほうまで可能な限り引き上げておくと、この後立位をとって頂いた時の介助がスムーズに行えます。手すり等に掴まり立位を保持していただきますが、この時ふらつきが無いか十分に確認してください。高齢者の場合この一連の動作だけでもかなり疲労するものです。表情の変化の観察、めまい等が無いかを被介護者にも確認するとなお良いでしょう。

安定した立位を保持できたら下衣を引き上げ衣服のしわやたるみをチェックします。座位を取って頂き、更衣終了をお伝えするとともに最後にもう一度体調に変化が無いかをお尋ねして更衣終了となります。

全介助の更衣手順(臥位・上位前開き)

被介護者の体調を確認しケアにあたりましょう。安定した座位が取れない場合に臥床した状態で更衣を行う場合があります。介護者の手の届く範囲に清潔な衣服を準備しておくとスムーズな介助が行えます。

まず上衣のボタンを外し、肩の部分を緩め、健側の腕を抜きます。脱いだ健側の衣服を身体の下に丸め込みます。次に健側を下にして側臥位を取っていただきます。この時ベッドに手すり等あればそこをしっかりと掴めるように誘導してください。身体に負担無く安定した側臥位をとって頂く事が可能です。

患側の袖を抜き、身体の下に巻き込みが無ければここで衣服を取り除きます。無理に引っ張って皮膚を傷つけそうなら、患側の衣服を丸め込み健側の下に丸めて差し込みます。

手早く安全に清潔な衣服を患側から通しますが、患部の状態によって時間を要するようであれば、バスタオルを肩に掛けると焦らずに介助を行うことができます。

患側に衣服を通し終えたら、ゆとりの部分も含め健側の身体の下に丸め込むようにすると、健側の着衣の時衣服が突っ張らずスムーズに行為が行えるはずです。最初に着ていた衣服がまだ身体の下にある場合には、身体、新しい衣服、着終えた衣服の順になるように間に丸め込むようにしてください。仰向けに戻り、着終えた衣服を取り除いた後清潔な衣服を被介護者の身体の下から引き出します。清潔の観点からも、着終えた衣服と新しい衣服をまとめて引き出す、というのは避けたほうが良いでしょう。健側の腕を通し、ボタンを留め、上衣の終了です。

次に下衣ですが、まず被介護者の膝を立て、でん部を支えて軽く腰を浮かし衣服を下げます。下肢に力の入る被介護者であれば膝を立て、腰を浮かしてもらうと良いでしょう。両膝あたりまで衣服を下げることができると患側の脱衣もスムーズに行なえます。

健側の足を衣服から抜き、次に患側の衣服を抜き取ります。新しい衣服を患側に通した後、健側の足も通します。その際もやはり、介護者の手で被介護者の足先を迎えにいくという感覚で行うとよいでしょう。被介護者の膝を立て、でん部ぎりぎりまで衣服を引き上げます。健側を下にして側臥位をとり、下衣を引き上げ上衣の背中のしわを伸ばし整えます。介護者に更衣終了をお伝えし体調の確認も行って更衣終了です。

まとめ

更衣介助を行う際は、被介護者の真正面に立たない配慮が必要です。症状に応じて難しい場合もあるでしょうが、ご自身なら更衣する姿を他人に真正面から見られたいでしょうか?更衣の際には可能な限り視界を遮らず、真正面に立つ時間を短くすると被介護者の精神的な苦痛を和らげることが出来ます。

一部介助の場合、声掛けや見守りで次の動作を促し出来ることは、被介護者ご自身で行なっていただく為、更衣に時間がかかりがちです。焦って先回りするケアにならないよう、時間に余裕を持って介助にあたれると、被介護者の達成感や満足度にもつながる質の良いケアを提供できるでしょう。

更衣介助にはもうひとつ重要な役目があります。それは皮膚の観察です。平常と違う傷、あざ、赤みなどが無いかさりげなく確認しましょう。もし異常があれば記録をし、各部署との連携が必要になる場合もあります。化膿や皮膚の剥離がある場合は看護職員がその患部の治療を行いますので、自己判断で薬の塗布等行わないようにしてください。緊急度に応じた対応については、勤務先でおよその対応方法を定めているものです。いざという時に慌てないよう事前に確認しておくと良いでしょう。

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